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空風羅刹の隠れ家
にじファン大虐殺から逃亡してきました。
目次
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第7話:護衛 Side B
Side ユリウス
先日のパオロ様との会食後、お嬢様にやはり専属の護衛は必要だと進言してようやく認めていただきました。……これまでは「あなた達より私の方が強いじゃない」との言葉に何も反論できず見送られていたのですが、どうやらお嬢様にも多少なりとも危機感を持ってもらえたようで良かったです。

さて、とは言え護衛の選別は少々面倒でした。何しろ『アルカナ』はお嬢様に心酔しているメンバーが多いものですから希望者が多く、かといって護衛をあまり大人数にするわけにもいかないため何とか三人にまで絞ったのですが今度は選ばれなかったメンバーが不満を言ってきたりしたため護衛の決定よりその対応に手間取ったぐらいです。

さて、そんな一悶着あった護衛選抜ですがいろいろ考えた結果、まだ13歳と若いものの防御専門の"The Empress"カーリナ、遠距離戦と除念が出来る"The High Priestess"ヴァレリー、接近戦が得意でお嬢様と能力の相性がいい"Strength"ナデシコの3人に決定しました。三人とも女性なのは護衛と言う仕事上トイレを初めとした男は入れないような場所に入る必要があるからです。

……正直に言いますと私も護衛に入りたかったのですが、立場上お嬢様と離れて部下の指揮等の仕事をすることも多いですから諦めました。残念ですが仕方がありません。



Side ヴァレリー
まさかあの異様に倍率の高かった護衛メンバーに選ばれるとは思っていませんでした。

「この幸運を神に感謝いたしましょう」

「……個人の趣味をとやかく言うつもりはありませんが、信仰してもいない神に感謝をささげるのはどうかと思いますよ?」

「あとそのシスター服も止めたらどうだ?見ていて違和感がありすぎる。少なくとも普通の修道女は腰に拳銃を下げたりはしない」

……総突っ込みです。

「別にいいじゃないですか。この格好だと街に出ても警察に絡まれないんです。それとナデシコさん、銃は外では隠しています。最後に私の神はシルヴィア様ですから別に間違ってはいません」

「……好きにしろ。一応護衛としての役割を話しておくぞ。分かっているだろうが私は近接戦しかできん。だが逆に近接戦ならどんな相手だろうと完璧にお嬢様を守る」

まあナデシコならお嬢様に刺客と同じ武器を作ってもらえば相当の腕利き相手でも勝てるでしょうね。数が多いと相性が悪いですが、数に任せてくるような相手は大した実力ではないでしょうし。……それにあまり良い発想ではありませんが数の殲滅はお嬢様が一番得意なんですよね。

「遠距離からの攻撃は気付けさえすれば完璧に防いで見せます。……一方向からならですが」

変化形のカーリナの能力はオーラを強靭な盾にする事が出来る『絶対の盾(アイギス)』です。その防御力はすさまじく、大きさも最大5m四方までは可能なのですが……。

「一度に作れる盾が1個っていうのはちょっと厳しいですよね」

「そもそもなんでそんな尖った能力にしたんだ?」

そう、一度に一つの盾しか作れないんです。ナデシコさんの疑問も当然でしょう。

「お嬢様に能力の相談をしたら、数より威力だって言われました。実際この制約のおかげでここまでの防御力が出ているわけなので一概に悪いとは言えないのですが……」

「「ああ……」」

なるほど、納得です。お嬢様はいささか――と言うよりかなり『数より質』な発想の方ですからね。お嬢様の能力も『対多数専用』ではなく『対多数も出来る』が正しいですし、一騎打ち向きのナデシコや一撃必殺のブライアンの能力を見ても分かります。……『アルカナ』のメンバーは基本的にお嬢様と話し合って能力を決めていますし。

「まあ盾の展開ならお嬢様もできるし《堅》もあるのだから問題はなかろう。一部の、とても防ぎきれんような攻撃に対応してくれればいい」

「そうですね。……で、最後は私の『解放の銃弾(フリー・バレット)』ですか」

私の系統は放出系。能力は……。

「攻撃用と除念用の念弾。何も問題はないだろう。……私はお前に除念してもらいたくはないが」

攻撃用と除念用の2種類の念弾を撃つことです。ただ除念すると6回に1回は攻撃用の念弾が出てしまう上、除念は対象が《絶》の状態でないと効かないためすこぶる評判が悪いです。寧ろ回復能力持ちの"The Hierophant"のチェレンがいないと誰も除念されたくないらしいですが。

まあ、いろいろ問題は有りますが何とかなるでしょう。お嬢様、私達三人が必ずお守りいたします!
第6話:祖父 Side A
「久しぶりじゃのシルヴィア」

「はい、お久しぶりですおじい様」

レストランを貸切にして私と向かいあって座っているのはパオロ・ヴェルディと言う名の老人。私の祖父であり十老頭の一人として世界のマフィアを牛耳っている人物だ。

「急に呼び出してしまってすまなんだの。じゃがおぬしにいくつか聞かねばならんことがあってのう」

祖父はそう言って私の後ろに立つユリウスに一瞬目を向けた。……なるほど、話と言うのは『アルカナ』の事ね。まあ祖父からしたら直系のファミリーの一つとは言え自分の下の組織が必要以上の戦力を持つのは嬉しくないでしょうしね。

「聞かねばならないことですか?何でしょうか」

「お主が組織しておる私設部隊の事じゃよ。たしか『アルカナ』と言ったかの。その規模や戦力について……話してくれぬか?」

「規模や戦力ですか?いくら上位組織の要請とは言えさすがにそれは無理ですよ。ファミリーの戦力を晒すなんてよっぽどの愚か者ですらやりません」

その『戦力』が念能力者ならなおさらのことだしね。

「ふぉっふぉっふぉ、『ファミリーの戦力』ではなく『シルヴィアの戦力』ではないかの?」

「ふふ、『ファミリーの戦力』ですよ。いずれランベルティーニ・ファミリーは私が後を継ぐんですから」

「随分な自信じゃのう。……さて、お主は陰獣の人数を知っておるかね?」

「最大10人です」

十老頭全員がそれぞれの組から一番の武闘派を集めて作ったのが陰獣。状況によって欠員があることも多いけど最大が10人というのは変わらない。

「でも陰獣は十老頭の直属の部下から選ばれるんですよね?流石に『アルカナ』から人員を出すのは無理がありませんか?」

「いやいや、そういう意味で言ったのではない。……では現在のハンターの数は?」

「毎年増えたり減ったりしてるけど……600人代の後半でしょ?」

確か原作では661っていう数字が出てた気がするけど、毎年試験で増えるし――増えない年もあるけど――死人や行方不明者もよく出るからあまりはっきりしない。死亡が確認されていない100年以上前のハンターがいまだ現役扱いになっているなんて話もあるし。……会長あたりのことかもしれないけど。

「そうじゃ。そして聞いた話ではお主の『アルカナ』は20人前後だそうじゃな。……これが個人で持つにはどれだけ大きい戦力か分かっておろう」

「…………」

なるほど、確かに自分の下部組織とは言え個人が20人もの念能力者を抱えていたら目立つわよね。少しうかつだったかもしれないわね。

「シルヴィア、儂はお主を信じておる。……誠実だとかではないぞ?お主が何が特になり何が損になるのかをしっかり理解しているということを信じておる。故に儂は『アルカナ』についてどうこう言うつもりは無い。お主が儂に反抗するのがどれだけ不利益をもたらすか分からんはずがないからじゃ。……じゃが他の9人からしたらお主はただの危険人物じゃ。今は儂の紐付きと言うことで他の9人を納得させておるが、名前が売れてきた以上暴発する輩がおらんとも限らん。特に他の9人の下部組織から点数稼ぎをしようとする輩がの。……気を付けるんじゃよ」

「……はい、ありがとうございますおじい様」

「うむ。では堅い話はここまでじゃ。このレストランは儂の行きつけでの、ちょっとばかし値段は張るがかなりうまいぞ?」

祖父がそう言って手を叩くとウェイターがオードブルを運んできた。……確かにおいしそうね。

それにしても、祖父の言う通り少々うかつすぎたかもしれない。原作を考えて幻影旅団にも対抗できるメンバーをと思って作った『アルカナ』だけど、確かに幻影旅団の事を知らなければ完全に過剰戦力、何か企んでいると思われても仕方がない。……さて、これからどう対応しようかな?
第5話:お嬢様強し Side B
Side ナデシコ
「つ、つえ~」

「歯が立たない……」

「さ、流石はお嬢様……」

私の名前はナデシコ、『アルカナ』では“Strength”だ。あれからお嬢様は私達の意図を汲んで専用の訓練用の施設を山奥に作って下さった。ちなみに山奥なのは訓練が見られて私たちの能力や戦い方が流出するのを防ぐためだが、そのせいでホラーツ――“The World”――がよくバテている。……彼の『世界扉(ワールド・ドア)』は便利なのだ。

そしてその訓練施設だが、残念ながら全員での訓練は「屋敷を空にするわけにはいけない」との意見で全会一致で行わない事になり、二人から数人での模擬戦が基本になった。そして今日は珍しく時間が作れたお嬢様も参加し、試合を行ったのだが……私、ブライアン、“The Moon”のキャメロンの三人がかりでボロ負けするという結果になった。

「ふう、久しぶりの試合だったけどまあまあね。あなた達もそんなに落ち込まなくていいわよ?相性とかもあるし」

お嬢様がそう言うと同時にあたりを飛び回っていた金属がお嬢様に集まった。金銀プラチナは装飾品に、鋼は幾つかの刃物に。

お嬢様の能力『金属芸術(メタリック・アート)』は予め念を込めた金属を自由に操るという単純なものだ。だがそれにちょっとした追加能力と制約・誓約を与えることで万能かつ強力なものに仕立て上げている。今回の試合もブライアンの弾は全てはじかれ接近戦型の私とキャメロンは近付くこともできないうちに金属製の針と刃物でズタボロにされてしまった。
……と言うかお嬢様に勝つには金属の盾を操るお嬢様が反応できない速度で攻撃を当てるか、もしくはその盾ごと吹き飛ばすような威力で攻撃しなければならないわけで、私達では端から勝機がなかったのかもしれないが。

「ハア……つ~かよお嬢様、何でそんなに威力があるんだ?仮にも強化系のナデシコが正面からの力比べで吹っ飛ばされてたぜ?」

「はは、まあ強化系とは言ってもナデシコの能力の『正々堂々』は相手と同じ武器で戦うと強くなるっていう能力だしね。私みたいに武器……って言っていいのかわからないけど、まあ使う物の形がころころ変わる相手は相性最悪だしね」

ええ、その通りです。逆に無手の相手にはめっぽう強いのですが……。

「私の氷も無意味」

そうつぶやくように言ったのは冷気を纏わせた槍を使うキャメロンだ。足元を凍らせて動きを妨害したり筋肉を冷やして動きを鈍くしてから刺し殺すのが基本戦術の彼女では接近できないと何もできないからな。

「そしてブライアンは本気で役立たずだったな」

「うるせえ!単発の念弾じゃほとんどオートではじかれるうえに溜めようとするたび邪魔されるんじゃどうしようもね~だろうが!」

まあそれも事実だ。この3人で1番威力が出るのはブライアンの念弾をフルで溜めたものだろうが、10分以上の溜めが必要なため使う機会がなかった。

「だが溜められていれば私とキャメロンが突っ込む道を作れたかもしれんな」

「防御専念すべきだった」

「そうだな、おめ~らが溜め終わるまで俺を守って、溜め終わったらぶっ放してそこに2人で突っ込んで……」

そうして私たちは反省会――と言うか次回のための作戦会議を始める。主人を倒す方法を真剣に話し合うなど不謹慎かもしれないが、そんな私達をお嬢様が頼もしそうに見ていたのはきっと気のせいではないだろう。
第4話:面倒な現状 Side A
「……つまり腕が鈍るからまともな仕事を用意しろっていうこと?」

「可能なら、ですが」

「まともな仕事、ねえ……」

正直に言って難しいのよね。『アルカナ』のメンバーたちがその能力を十全に発揮できる相手なんて念能力者しかいないし、その念能力者は多くがハンターかどこかの国に所属しているか犯罪者。もちろん完全にフリーな念能力者もいることにいるけどどちらにしろリスクや手間を考えると割に合わない。

「ありませんか?」

「無いわね。『アルカナ』全員で当たらなきゃならないような相手か結果に対して手間が釣り合わない相手しかいないわ。正当な理由で相手にできる念能力者なんて皆無だし。……そうね、暫くはお互いに試合でもしててくれる?」

「分かりました」

うん、せっかくこれだけ数がいるんだからメンバー内で練習試合をすれば十分訓練になるでしょ。……いや、せっかくの機会だしどうせなら。

「あと私の予定も調整しておいてくれる?私も訓練に参加するから」

「はい。……はい!?シルヴィア様も参加されるのですか!?」

あ、ユリウスの驚いた顔なんて久しぶりに見たわね。ユリウスっていつも落ち着いてるから。

「私だってたまには実戦的な訓練をしたいのよ。そりゃ自室で基本的な訓練は毎日してるけど、戦闘訓練はしばらくぶりだし……そもそも私の『発』があれなのに実践訓練無しっていうのがありえないのよ」

「……あ~確かにそうですね。と言うかなんでこれまで実践訓練を入れてなかったのですか?」

「時間の問題と……ジャコモが父のところに戻ったときはあなた達相手じゃ本気を出せなかったからね」

どうも私の才能はかなりすごいらしく、既に超一流と言えるだけの実力は持っている。これが転生特典のようなものなのか、ただの偶然なのか、何らかの必然なのかは分からないけど。

「じゃあそういうことでよろしく。……あ~それにしてもやっぱり面倒なのは外患よりも内憂ね。ケンカ売ってきた馬鹿なマフィア連中――まあつまらな過ぎるって不満が出るようなトカゲの尻尾の先っちょだったみたいだけど――はこうやって叩き潰せばいいけど身内じゃそうはいかないものね~」

本当に面倒くさい、特にお義母様(テレーザ)は。

「必要ならテレーザ様も始末しますが?」

「そしたら今まで『男児と有力な長女がいるから』って言って燻ってた妹達……の親がわらわら出てくるでしょうが。さすがに愛人皆殺しにしたらお父様も怒るだろうし」

現状目立たないとはいえ父には正妻であるお義母様(テレーザ)以外に愛人はたくさんいるし、義弟(ポルフィリオ)以外にも兄弟はいる。全員妹だけど。因みに私が長女なのは偶然だけど弟がいないのは熾烈な勢力争いの結果、私が何もしないうちにほぼ全滅していた。

で、その妹たちの母親が勢力争いにしゃしゃり出てこないのは有力な跡取りが二人いるからだ。つまり、私と義弟(ポルフィリオ)の間に入っていく危険を冒すぐらいならどちらかが倒れるまで、もしくは共倒れになるまで待っていた方がいいと考えている連中ばかりだということ。ここで下手に手を出すと敵が一気に増えかねない。特に仮にも男児である義弟(ポルフィリオ)と違って女である私になら勝てると思っている連中は多いのだ。